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新人看護師が仕事できない理由

 新人看護師が仕事できない大きな2つの理由について、研究結果と20年の実体験から話します。もしあなたが新人ナースで仕事ができないから看護師を辞めたいと思っているのなら読んでみてほしい。そして、「なーんだ、じゃあどうせならやり過ごしてやれ~」と思ってちょっと休憩モードになれたら儲けもんです。全員最初は新人だったのになぜかその気持ちがわからなくなるという不思議現象、きっと誰も新人に戻りたくないんよ。

目次

新人看護師が仕事ができない理由

新人は2つのお色直し(変身)で超大変

 私たち看護師は社会人になるとき2つの「お色直し」を経験します(結婚式のお色直しを知らない人は、ここを読み飛ばしてくれ)。学生から社会人へのお色直し、素人から専門職へのお色直しです。この2種類のお色直しを同時にやってて複雑だから、新人看護師は仕事が上手にできないのです。専門性が高くない仕事だと、お色直しは1種類+αくらいで済む印象です。看護師はお色直しに膨大な時間がかからないように、そして、お色直し途中で「え~っ!そんなメイクすんの!?聞いてないんだけど?」とならないように、学生のころから実習に行き、インターンシップに参加したり、臨床でもリアリティショックを少なくできるような工夫をしています。だからもともと看護師の仕事(お色)が嫌いな人は、看護師を目指さないほうがいいよね。

組織社会化:学生から社会人へ

 

新人ナースが学生から社会人にお色直しすることを、専門用語で組織社会化と言います。

 組織社会化とは、簡単に言うと組織の文化になじんでいくことです。職場で必要な知識・技術・人間関係・お作法を身に着け文化になじんでいきます。社会人として遅刻しない、敬語を使う、会社の規則に従う等々ありますよね。これは看護師に限らずどの職業でも社会人1年目が経験するプロセスで、自分らしくのびのび過ごしていた学生時代から、社会人として職場のルールを守り自分を律しながら給料に見合う働きをするという変化は、けっこう大きい「お色直し」です。だから新人はしんどくて当たり前なのです。(ちなみに働く組織が変わるたびに組織社会化するので、部署異動や転職でもこの現象は起きるといわれています)

専門職社会化:素人から専門職へ

 

新人ナースが素人から専門職にお色直しすることを、専門用語で専門職への組織化(以下、専門職社会化)と言います。

 専門職社会化とは、簡単に言えば専門職の文化になじんでいくことです。看護師もPTもシステムエンジニアも専門職ですが、それぞれ特有の文化に合わせた「お色直し」が必要になります。例えば看護師は、社会人になっても集団で技術研修し、自己学習のレポート提出があったり、先輩が後輩に「教えることを出し惜しみする」現象に遭遇することもあるし、24時間リレーで働くのでコミュニケーション能力は特に必要になる。良いか悪いかは別として、こういう経験をしながらだんだん看護師業界になじんでいきます。PTは同じ医療職だから集団の技術研修のように類似文化はあるけれど、看護師と全く同じ経験をして育つことはありません。システムエンジニアは単独作業時間が看護師より圧倒的に長いため、看護師ほどコミュニケーションお作法を新人に教え込む必要がないです。これだけでもその職業の専門性によって、「お色直し」のやり方が違うことに気付きます。

では、専門性が高くない仕事とはどう違うのかな?私は一般事務職から看護師に転職したので、比べてみたよ。

 私が20代の頃、一般事務職は専門知識や資格なしで就職できたから看護師みたいに専門性は高くなかったです。だから集団研修はマナー研修だけで終了だし、事務職として自己研鑽しなくても自分の給料が上がらないだけでお客さんは困らないので自己学習のレポート提出なんてないし、仕事中に先輩が後輩に「PCの基本操作、自分で調べてきて」とか何回も言ってたらその日の仕事が進まなくて部署のパフォーマンスが下がるのでどんどん教え込まれる。だから社会人1年目の時、社会人としての組織社会化の辛さはあったけど、一般事務職としての専門職社会化の辛さはそんなに大きくなかったんだと思う。

 専門性が高い仕事とそうでない仕事だと、このくらい違うんだなと思いました。そう思うと…看護師1年目って、日本の同年代の中でもけっこう大変なのかもしれない。少なくとも私の23歳の時よりはるかにストレスフルであることは確かです。

 看護師は専門性の高い職業なので、看護師の新人はみんな【2つの大きな組織化】に対処する事になります。だから大きい2つの変化に対処中の新人ナースが仕事できないのは当たり前だし、同期の新人ナースより仕事ができないとしても、変身時間は人によって違うのでバラついて良いのです。お色直しに例えるなら、同時に2種類のお色直しをスッピンからしないといけないので超大変なのです。

器用な人にも不器用な人にも「とんでもねぇ大変な1年」になっているわけやな。そりゃ新人看護師が仕事ができなくて、当たり前だわ。(って自分もそうだったけど)

先輩から指導された時の心のもちよう

 新人看護師のみなさんは、先輩に教えてもらえることに感謝しつつ、自分のことは責めない。先輩に指導されたとき「できない~!!!」と思わなくて良いのです。指導されたら、

なるほど~、そりゃそうだ…

と、口には出さず(←ここが組織社会化 笑)、心で思っておく。そして先輩には

そうですね、次からそうしてみます。有難うございます。

とか、お礼を言っておきましょう。先輩はあなたより給料高いので仕事できて当たり前だし、先輩は指導するのも給料に含まれているので、あなたが仕事できないから指導してくるのではなく「仕事だから指導してる」と知っておきましょう。「いっぱい指導されて、私できてない~泣」と思って1年過ごしても、「給料分、私に教えてくれはった、ありがとさ~ん」と思って1年過ごしても、過ごす時間は365日で同じです。心で思うことはタダですから、ちょっと一息つきましょう。
 2年目になったら社会人マナーがつき職場での働き方がわかってくるのでだいぶ楽になるし、看護師としてもできることが増えて先輩にがっつりフォローされる緊張シーンも少なくなるので、永遠に今の苦労は続かないから思いつめないようにしましょう。仕事を辞めるほど心身を痛めつけないように、たまに休憩しながら1年目を過ごしてください。

 最後に、指導している先輩も「うまく指導できない~」と実は悩んでいます。新人教育方法については「役割」のカテゴリで書きたいと思います。

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