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実習指導者のコメントの書き方/看護師編

看護学生の実習指導者のコメントの書き方について、看護大学教員の視点から実例を紹介します。

目次

実習記録へのコメントは実習指導者の役割か

 実習記録へのコメントをするのが指導者の役割であるかどうかは、教員との事前打ち合わせで必ず確認しましょう。大学や専門学校、教員によっても、その考え方が異なるからです。実習指導者は実習記録を自由にみていいし指導するけれどコメントは義務ではないという学校もあります。指導者さんのコメントは学生にとって嬉しいものですが、実習指導者の役割は学生を喜ばせることではないので、指導者の役割と教員の役割を明確にし、実習記録へのコメントはマストの業務であるかどうかは事前確認しましょう。もしマストでなければコメントを書かなくても罪悪感を感じる必要は全くありません、なぜなら実習時間内に十分に指導しておられるからです。

 実習指導者は学生指導の責任と患者看護への責任の両方を同時におっています。もし全ての学生の指導と患者ケアをこなしている指導者がいるのなら、それはかなり無茶でしんどい状況に耐えていると思います。臨床で学生の計画を聞き助言し、看護ケアをサポートしながら実施して助言し、看護計画の修正の相談にのり、質問に答え、学生全員の動きの報告を聞きながら「受け持ち患者の看護をしているのです」。ひとことですまされた「受け持ち患者の看護」には、申し送り、後輩看護師への指導、リーダーへの報告、患者バイタル・ケア・投薬、多職種へのコンサル、検査送り迎え、物品補充なども含まれるわけです。普通に患者受け持ちするだけでも大変なのに、慣れない無資格の学生の安全やメンタル、学習の進捗状況も考えて指導するわけですから、記録へのコメント必須ですか?と聞きたくなる気持ちは当然なのです。まずこのすごく大変な状況にあることを自覚して、教員と事前相談されることをお勧めします。

実習記録のコメントの留意点

 実習記録にコメントするのが指導者の役割である場合、教員に「教育上、何を意識してコメントするのが効果的ですか?」と聞いてみてください。私が教員をしていたとき、実習記録へのコメントは実習指導者の仕事ではなく教員の仕事でしたので、ここでは教員目線でポイントを紹介します。

全学年共通のポイント

  • 実習目標の達成できていないところを中心にコメントする
  • 成績評価項目で弱いところを中心にコメントする
  • 実習前半は簡単に達成できるものから始め、中間日に弱点強化ポイントを示し、最終日にむけて弱点を克服できるようにしむける

基礎実習:学生の毎日の実習目標を意識してコメントする

 大学1~2年生の基礎実習では受け持ち患者の看護過程をしない学校もあります。ですから、実習で毎日立ててくる目標はたいてい学生自身の実習目標です。記録に書かれている体験や学びに対する指導者の感想でもかまいませんが、必ず目標に立ち戻ってコメントすると指導の方向性がずれません。

1日目
実習目標は達成できましたか?達成か未達成か評価しましょう

2日目
実習目標が達成できた理由や、未達成だった理由も考えてみましょう

3日目
実習目標がどのくらい達成できたのか、達成できたor未達成の理由、明日以降の課題を明らかにしてみましょう

 初めて目標評価をする学年であれば、少しずつステップアップするようにコメントします。1回でできるようにならないので、1週間や2週間の実習では「自分の実習目標を意識して実習しないといけないな」「実習目標は評価しないといけないな」「実習記録は感想だけで終わらないほうがいいな」と理解するだけで終了します。毎日実習目標を意識していれば自然と看護のことを学ぶことになります。

領域実習:患者目標を意識してコメントする

 大学3年生以降の実習では各領域別実習で看護過程の展開をするところが多いです。実習前半では1.2年生同様、目標評価できているかに注目したコメントが必要になります。なぜなら学生は毎日の看護実践に必死なので、自分で設定した目標を見失いがちだからです。そのため以下に留意してコメントしていました。

  • 本日の目標を評価できているか(感想だけ書いて、目標達成度や目標自体の妥当性を評価していないことがある)
  • 本日の目標の評価に至るアセスメントは妥当か(Sに頼り切りでO情報がないことがある)

例えば初学者は患者目標に関してこういうことがあります

患者さんに足浴したら「さっぱりした!」って言ってたから目標達成!

今日の目標は「足浴によって足の皮膚が清潔になる」だよね?結局清潔になったのかな?足浴したら垢はどのくらい取れたの?足浴後は皮膚はツルツルになったの?O情報がないのにアセスメントして目標評価しちゃってるよ

Oには学生や看護師がどんなふうに看護ケアしたのか
Aには実施した看護が効果的だったかどうか考察も書いて
看護ケアの評価もしてほしいな~

この時に、コメントが長くても短くても成長に変わりないのが実感なので、私のコメントは短いです。

(アセスメントの所に矢印引いて)O情報は?追加して目標再評価

コメントの意味がわからなければ質問がきますし、翌日追加修正されていなければ口頭で指導して着実にステップアップできるように支援します。

領域実習:学生の学習達成度(成績)を意識してコメントする

 実習の中盤では、学生の学習達成度(成績)を見極めて、弱いところを強化するコメントが必要になります。なぜなら総合的に60点に達していないのに残り3日間でリベンジして!と言われても難しいからです。私は実習中盤、残り1週間以上ある状態で学生の仮成績をつけて面談し、学生・指導者・教員で強化すべき課題を共有していました。そのためコメント内容は学生によって違いますが、よく弱くなりがちな点を挙げてみます。

看護過程

  • 情報収集:社会面の情報が全く取れていない
  • アセスメント:SO情報がないのに創造的なアセスメントを書いてしまう
  • 目標評価・目標再設定ができていない(未達成の目標をほったらかし)
  • 計画の修正ができていない

実習中盤は弱点を強化していくので、同じコメントが続くことがあります。

9/1「O:社会面不足」

9/2「キーパーソンは?仕事は?」

目標評価したあとの計画修正や追加ができていない場合も短いコメントが続きます。

9/3「計画修正」

9/4「計画追加を!」(とか笑) 

領域別看護

  • 領域別の特徴的な看護の視点を忘れている(小児なら発達段階、急性なら術後合併症など)
  • 受け持ち患者の個別性の視点を忘れている(患者の性格・健康観・サポートシステムなど)
  • 多職種連携の視点を忘れている(医療チームの他の専門家の知恵を借りてもいいんだよ~と教える)

実習前半の早い時期に看護過程の基礎をおさえてもらい、本来の目標である領域別実習の指導にどんどん力を入れていきます。標準看護計画になっていて患者の個別性が看護計画に反映されていないときがあれば、具体的にコメントしてあげると学びが深まります。

高齢者の加齢に伴う身体変化を考えて、清拭の看護計画に留意点を追加してください

術後2日目にリスクが高まる合併症はなにですか。それをふまえた観察項目が不足しています。

 大切なことは学生が頑張ってそれをクリアできたときは「OK!」「Good!」などフィードバックを返すことです。そして学生が最終的に60点をとれそうにない進度である場合はコメントもそこそこに早めに教員に相談です。

悩ましいのは看護過程というよりは実習態度(実習への姿勢)が整わず、その結果として実習記録ができない場合です。

実習態度

  • 予習復習していないので記録内容が全般的に浅い
  • 何かの理由があって実習記録が白紙

 このような実習態度面に原因がある場合、記録のコメント記載だけで指導するのは難しいです。赤ペンを沢山入れても学生のためになるとは思えません。例えば実習記録が白紙の学生に「書いてきましょう」とコメントする前に、教員に相談するか学生に「記録かけなかったみたいだけどなんかあった?」と理由を聞いてみてください。さぼっているのではなく、本当にいろいろな理由があります。

24時までずっと考えていたんですけどどうしても文章にできなくて…(記録に書いては消した跡が残っている)

片道2時間かかるので、実習2週目になってから体力が持たなくて十分に記録ができなくなりました(泣)

疲れるといつも喉が腫れるんですけど、昨日の夜ちょっとおかしかったので記録せずに早く寝ることを優先しました。今日は患者さん大事なICで絶対一緒にいたいと思ったんです(半泣)

 このように、学生の理由によってはコメント記載で対応できないものもあります。そもそも実習記録を書くことが臨地実習の目的ではなく、「**看護を理解すること」が目的ですから、こういうときは本来の目的が達成できるように手を変え品を変え支援していきます。

領域実習:学生の強みを意識してコメントする

 実習中盤からは学生の弱みと強みがわかってきますので、学生の強みに着目したコメントができるのは実習指導者ならではです。教員はベッドサイドでの患者とのやり取りを毎日はみていないので、学生の細かい成長に気付きにくいです。情報収集量や質、アセスメント能力、計画修正能力などは記録や発言に現れるのでわかりますが、ベッドサイドや病棟での細かい実践の成長は指導者のほうがよく気づいていて、いつも教員にフィードバックしてくれます。

最初は焦って患者さんの話を遮っていたけれど、今はじっくり患者さんの話を聴いて、病態生理とつなげられるようになりましたよ~!

構音障害があるAさん!患者さんのほうから、退院したらやりたいことや困っていることを沢山話してくれたらしいです。ナースは誰も知らない情報だったので助かりました。学生さんは相槌やペンを出すタイミングが絶妙で聞き上手だから、患者さん話したり書いたり使い分けできて気持ちを言いやすかったんでしょうね~。

 いつも「足りないこと」は指導されますが、実は「できるようになったこと」の方がはるかに多いのが現状です。指導者にしかできないコメントはまさにこれです。

患者さんとの信頼関係ができたから話してくれたのですね。コミュニケーションのどこが良かったのか振り返って看護計画に追加してください。情報は病棟のカンファレンスでも共有しておきます。

**症状のアセスメントあっています!**について主治医にコンサルしておきます。

 学生は病棟の看護に自分の看護計画が活かさたことを知ると、看護実践が机上の空論ではなくなり、自分の看護で患者さんの療養生活をよくしていけるんだと実感できます。

実習指導者もコメント業務を簡略化する

私は学生によく言ってました

記録は見たら印鑑します、なかったら言ってください
上手くいってるときは微笑んでコメントしません
口頭指導と重複のコメントは書きません
内容をみるので量はいりません質です
老眼きてるから大きい字で書いてください

でも時々文章でも褒めてほしい~(と言ってくるタイプが時々いる笑)


 めずらしい教員みたいですが、めっちゃしゃべるので?クレームはありませんでした。実習指導者もコメントを書くのが大変すぎるときは、自分と学生の間でルールを設けてもいいと思います。なぜなら、最初に書いたように、実習時間内に十分指導しているからです!

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