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有料老人ホームの看護師の仕事

有料老人ホームのリアルな看護師の仕事について紹介します。

目次

有料老人ホームの入所者の特徴

疾患と年齢層

  • 入居者の主な疾患は認知症、脳血管障害、高血圧症、心疾患、糖尿病
  • 複数の疾患をもち、合併症もあるけれど、地域で生活できる健康レベル
  • 杖歩行、車いす生活など介助が必要なの人もたくさんいる
  • PEG、ウロストミー、ストーマ、CVポートなどの処置が必要な人もおられます
  • 年齢は、75歳以上の高齢者が大半を占め、平均年齢は80代前半が最も多い

経済状況

  • 一般的に一か月20万円前後から50万円以上の入居費用を払える経済層の人です
  • 金額はその施設のサービスによるので一概には言えません

入所背景

  • 要介護レベルだが、家族で介護できない、独居で日常生活が自分でできない
  • 要支援レベルだが、日中大きな広い自宅で過ごすのが安全上不安 など

ほかにもいろいろな事情があって入所しているので、経済的に恵まれていても悩み事がある場合も多いです。健康でもやむを得ず自宅を手放して入所される方もおられるので、それぞれの背景に心配りしながら看護したいですね。

有料老人ホームの看護師の仕事

通常業務

 基本的に医療処置が少ないのが有料老人ホームの特徴なので、医療行為のレベルはあまり高くありません。60人の施設で2年間に人工呼吸器を受け入れたことはゼロ、酸素投与2名だけでした。自宅で一般の方が自己管理するレベルのことは「健康管理」として記述します。

健康管理

  • 必要な方はバイタルサイン測定
  • 血糖測定、インスリン注射、内服管理、与薬
  • 排便コントロール

日常生活援助

  • 介護士が、食事・入浴・更衣・陰部洗浄・おむつ交換・体位変換などの援助をします
  • 看護師は医療度の高い人の日常生活援助を担当します
  • 施設によっては看護師と介護福祉士がすべての援助を協力して行うところもあります

看護と介護が完全に仕事を分業(看介セパレート)していると、看護師の肉体的な負担は軽くなるけど、スタッフのレベルによっては異常を見逃すことにもつながるので、ノーマークの人ほど時々ケアを見に行くのは必要かもしれない。介護士はとても仕事がハードなので人手不足や入れ替わりも多いので、私たちの助け合いが結局利用者さんを守るなって思うことが沢山ありました。

医療処置

入所者状況によりますが、よくあるものを紹介します

  • 糖尿病のフットケア、傷のケア
  • ストマーやウロストミーの管理、バルーンカテーテルの管理
  • CVポートや、一時的な点滴の管理
  • PEGやNGチューブからの栄養投与
  • 吸引
  • 褥瘡処置

入所者と家族への説明

  • 特にターミナル期に入る方は今後の方針など医師と看護師が施設長と話し合いに同席します
  • 急変が多くなってきた場合は、急変時対応、特にDNARについて話し合います

私は夜勤で急変して看取ることになったとき、看護師は自分一人だったので、急変対応しながら主治医に電話&家族に説明の電話もしました

看護記録

  • ホームでも看護記録はあります。
  • 紙カルテの所もあるので、間違えたときの「訂正のしかた:二重線と訂正印」は知っておきましょう。施設ルールも確認しましょう。

医療機関との連携

  • 緊急入院や定期的な往診を受けている場合は、看護師が先方の医師と話をします
  • 患者さんと家族の意思、生活習慣などをよく把握しておくことが求められます

有料老人ホームでの必須スキル

地域でよくある処置

  • DM足病変の創処置、褥瘡処置
  • ストマーやウロストミーの管理、バルーンカテーテルの管理
  • CVポートや、一時的な点滴の管理・PEGやNGチューブからの栄養投与
  • 吸引(口腔・鼻腔・気切すべて。アンビューバックや酸素はほぼありません)

往診医の仕事を知る

  • バルーンや点滴の入れ替えは往診医か往診クリニックの看護師が派遣されて実施することがあります
  • ホームの看護師がする処置の範囲を確認しておきましょう

麻薬や向精神薬の管理

  • 麻薬なども自宅で生活しているのと同じなので普通に持っています
  • どこで何を管理すべきか職場の規定も確認し、紛失に注意
  • 提携薬局の薬剤師が来て配薬ボックスをセットするホームもあるので、特別な薬の管理は看護師も必ず確認しましょう

病院との違い

  • 常駐医師はいない、夜間も超緊急時以外、主治医に電話することはしない
  • 夜中に電話せず明け方を待つのか、夜中でも電話するのかなどの判断を迫られる
  • 救急車を呼ぶタイミングを間違えると本当に命にかかわる=看護師はこの判断を大いに期待されているし役割でもある
  • 介護福祉士やヘルパーに許可されていない医療処置を任せることがないように、互いの職務範囲を把握する必要がある
  • ホームはあくまでも自宅なので、「回復させる」「治療する」などの急性期看護の要素は超少ない

病院から出て、初めて地域の生活の場で看護師として仕事をすると、とまどうことも多いです。物資も潤沢ではないし、PEGでさえ見たことのない種類があります。でも、「ああ、退院したらこうやって生活するんだな」と知ることで、次病院で働くときには、退院後の生活を想像しながら継続看護できるようになりました。

 高齢者と接するのが好きな方や、自宅で自分らしく生活することを支援したい人にはアットホームでとてもいい職場だと思います。本当に面白おかしいことや、人生の先輩から学んだことが多くて語り切れませんが、詳しいエピソードは別記事で!

出典

  • 日本看護協会「有料老人ホーム等における看護の実態と課題」(2009年)
  • 厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」(2022年改正)
  • 全国有料老人ホーム協会「有料老人ホームにおける看護職員の役割と処遇改善について」(2017年)
  • 厚生労働省「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」
  • 出典:公益社団法人全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム入居者の健康と介護に関する調査報告書」(2016年)
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