初めて実習指導者になる人は「私の指導合ってますか?」と教員に聞いてきます。自分の指導に自信がないからだと思いますが、自信がないのはあなたに能力がないからではありません。あなたの指導を誰も評価してくれないから自信がないのです。と、私は思っている。
実習指導能力の評価基準
みなさんの病院や施設には実習指導者の能力を評価する基準はありますか?私は病院で実習指導をしたことがあるけど、指導者を評価する基準はなかった。きっとそういう職場が多いと思います。そして実習指導者が実習目標に沿って的確に指導できているかどうかを評価できるほど時間をかけて観察している人は一人もいない。教員でさへ指導者が学生に指導しているところに張り付いていることはないからです。だから「私できてるわー」と思ってもいいし、「私の指導の仕方でいいのかな…」と悩むのもありで、けっこう無法地帯的なのかもしれない。
上司からの評価
私は実習指導者の能力について明確な評価基準をもつ師長に会ったことがありません。もしその基準があるのであれば、教員や学生に指導者についての感想を聞いてもおかしくないと思いますが、そういうアクションは今まで一度もありません。職場によって様々でしょうが、実習指導者という役割はとても重要な役割だから、必ず人事考課に入っていると思うし面談で話題になると思うのですが、師長は何をもって指導者さんに良いとか悪いとか、今後の課題を示したりできるのか私はいつも不思議でした。師長さんは指導者の指導を遠くからしかみていないし、最終カンファレンスにも出席しないこともあるし、最終カンファレンスだけ師長が出席したら学生は超緊張するのでいつもの良さは半分くらいしか発揮できず、指導者さんに素晴らしい指導をもらって育ててもらったのに面目ないなと思う時だってある。私は教員になってからそう思うようになりました。
学生からの評価
学生たちは確実に指導者と教員を評価しています。教員は個人宛てではありませんが授業評価があるので、自分たちの弱点や課題に気付くことができます。でも指導者には学生の評価は届きません。私は教員になってから実習後の個人面談を必ずしてきたので、自分の実習目標の達成度と今後の課題を言語化してもらい、教員からも学生の強みと今後の課題をフィードバックし、そのとき自由に実習の感想も言ってもらいます。学生にとって実習がどれほど難しい科目であるか承知しているし、実習期間中には振り返れないこともあると知っているので、看護の道を進む動機付け・学習継続の動機づけとなるように大切にしてきた教育活動の一つです。その過程で見えてきたのは、学生たちが実習中に言葉で表現できなかった臨床家への想いです。こと実習指導者に関してはご本人に伝えていない様々な感動のエピソードが沢山語られるのです。そしてたいてい、それを指導者さんに伝えないでほしいという学生はいません。また、「もっとこうしてほしかった」「これが困った」というリクエストも正直に述べてくれます。
教員は学生の実習環境を整える責務がありますから、実習終了後にリクエストが語られたときは学生に「次から改善できへんか指導者さんと相談してみるわ」と言って次の実習前に指導者と調整しています。でもそういう改善点だけではなく、ポジティブフィードバックもあるべきだと思って、学生の語った感謝や感動したことをそのまま指導者に伝えるようにしてきました。時間が経っていても必ず指導者に何らかの形で返すようにしましたし、師長にも返すようにしてきました。それを意図的に始めて観察していたら、やはりフィードバックが多い指導者の成長が早いような実感が出てきたのです。
きっと指導者は学生と教員からのフィードバックをもらうことで、自己内省を深めて次の改革に取り組み、しだいに実習指導が上手くなるのでしょうね。他者からの評価はとても大切です。もし機会があればご自身で学生の感想をもらうのも一つです。でもパワーバランス的に実習中の学生が指導者に正直な感想を述べるのは難しいので、教員と相談してみてください。
このような感じで、実習指導者が自信がないのは、他者評価がなく上手くいっているのかいってないのかわからない時によく起こる印象があります。そして明らかに実習が上手くいかないときは、自信喪失よりも「悩む」現象のほうが多い印象です。そのような時は教員が必ず調整するので、反省は残っても悩みは消えます。もし実習がいつもうまくいかなくて実習指導者が「自信喪失」まで進行しているとしたら、その半分は教員に責任があると私は思っている。実習を円滑にまわしていくのは私の仕事だから。だから、もし今悩んでいるとしたら、あまりお悩みを深めず相談してください。少なくとも私の周りにはこんな教員が沢山います。