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副師長の忘れられない心意気

 若手のころ集中治療室で三交代勤務をしていました。大昔なのにその頃の副師長たちの素晴らしい心意気が今でも忘れられません。病棟で中間管理職を担う人々は、自分は新米管理職として初めての大きな責任を背負いつつも、現場でメンバーとして看護実践するという多重課題に直面します。今日は副師長の実際について書いてみます。

目次

中堅看護師の退職が病棟に及ぼす影響

 今も昔も看護師不足は深刻で、中堅層が辞めてしまう問題が起こります。その年ちょうど師長は体調不良で長期不在、副師長は2名、8年目看護師1名、その下は全部4年目以下というメンバー構成になり、3人夜勤を組むのが非常に難しい状況に陥りました。重症の緊急入院も受け入れる集中治療室で、2年目は人工呼吸器受け持ちと緊急入院受けのデビュー年なので、それらのケースを受け持つ場合はフルサポートが必要でした。そのため1・2年目が一緒に夜勤に入ることはご法度でしたが、中堅不足でご法度破りをするしかなくなったのです。

 その日の夜勤は、4年目の私、2年目、1年目の3名夜勤でした。私はリーダー業務をしながら人工呼吸器患者2名とオペ後患者1名を受け持ち1年目のフォロー、2年目はオペ後患者1名と軽症2名を受け持ちながら緊急入院担当で、「緊急入院が来たらどうしよう」と緊張しています。病棟で受ける緊急入院は脳出血で意識なしなどの重症例ばかりだったため、搬送されたらすぐに挿管・鎮静・オペ出しになるからです。もし緊急入院が来たら私が2年目のフルサポートに入ります。そうなると病棟患者の対応をするのは1年目だけなので、私が片手間で目を配るとしても30分~1時間ほど手薄な状態になります。1年目は軽症3名を受け持ちしていましたが2時間ごとのドレーン管理が必要だったので、私はその都度指示を見落としていないかWチェックして回っていたこともあり、その時間帯に緊急入院が来ないことをひたすら祈る夜勤が始まりました。

 もう少し中堅層がいれば6年目、4年目、1年目などの夜勤になり、緊急入院が来ても病棟の看護が手薄になるところがないのです。でも中堅層がいなくなったことで、若い半人前の私が一気に後輩二人のフォローをする事態になり、ホンマに大丈夫ですか??になっていたということです。

 私たち同期は4年目ながらにこんな夜勤をしていたので、つい良からぬことを考えます。今日災害が起きて自家発電が使えないほどの状況になったら…、病棟患者のトリアージの順番を考えるのです。人工呼吸器が2名以上いて自発呼吸がなければアンビューバックでもんで当直医を待つ、その間にあの意識障害のある患者さんが起きてドレーンを抜いたらどうしよう、とか…。誰がDNARだったかもう一度確認しようとか。

 8時間勤務だったので、その過緊張が16時間続くことはないのですが、そうはいっても危険すぎる状況だったと思います。そんな時、ふと気が付いたのです。なんでか知らないけど、副師長さんがいつも毎日21時くらいまで残業している。なぜか毎日朝7時半くらいに出勤することに。 

中間管理職という役割

 副師長は2名で、1名はまだ異動してきて副師長になったばかりでした。二人で師長代行業務を務めながら、シフトを作り、ベッドコントロールを行い、スタッフ教育をし、病棟のすべてのインシデント・アクシデントの対策を講じ、スタッフで対応しきれない難しいケースの家族対応を行い、病院機能評価や看護手順見直しなど病院全体の運営業務もこなし、スタッフとして患者の受け持ちもしていたのです。今思うと、なんちゅうこっちゃ…と思いますが、今まさにこのようなことをしている看護師が日本中にいることとお察しいたします。

 そんな中、副師長たちは、この若すぎるスタッフで集中治療室の8時間夜勤をするのはリスクが高いと思っていたのでしょう。だから、日勤が終わると21時まで残務をしながら病棟にいて、様子をみてくれていたのです。21時になって副師長Aさんがいなくなると、23時には副師長Bさんが深夜勤で早めに出勤して来て、またしてもナースステーションの隅っこでPC開いて座っておるのです。だから4年目の私は、最悪何かあれば勤務時間外だけど副師長に話しかけて相談できるし、どうしようもなくなったら副師長たちは自分たちが動く覚悟だったのだと思います。そして私はリーダーとして病棟を守る時間は2時間だけという夜勤を過ごしていたのですね。

 このように副師長たちは、自分の睡眠時間を削って、ずっと病棟にいてくれました。もちろん異例の出来事だったとは思いますが、今現在さらに看護師不足と看護師の若返り(世代交代)が進むことを思うと、管理業務と看護実践業務の両方を担う中間管理職は本当に大変だと思います。

互いの役割を知ることの重要性

 若い時は上司がどのような仕事をしているのか知りませんでした。みんな自分が管理職になって初めて、見えていなかった重責や大量の業務に驚き、師長や副師長に感謝しながら時を過ごしていきます。日々溜まっていく不満や、時折起きる衝突も、互いの役割を知っていれば気持ち的に少し緩和されるのかもしれません。これは看護の業界に限ったことではありませんが、少ない看護師で多くの患者を看る時代に突入した今、看護師たちのチームワークはますます重要になりました。

 身を挺してまでの仕事は長続きせず、私たちが倒れることは、継続看護の中断を意味します。結局看護師も患者も困ります。どうか皆さん、可能なときに、少しでも、息抜きの時間を作っていただけますように。

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