献血ルームの看護師の仕事内容とリアルな一日のスケジュールをご紹介します。献血ルームと献血車の仕事は違うので、注意してくださいね。
献血ルームと医療機関の違い
- 病院は治療を受けたい患者ニーズと治療を提供する医療側の需要供給の関係があるが、献血ルームはその関係はない
- 献血ルームの来訪者は患者さんではない、来訪者は「お客様」に近い感覚
※献血はボランティアであるため厳密には何かのサービスを受け取るお客様ではありません、便宜上の表現です - 血液は完全に献血者の善意によるものなので、接遇は病院よりもさらに徹底して求められる印象
- 血液を待っている患者さんや緊急時の備えが必要であるため、献血ルームには採血量の目標がある
献血ルームの必須技術
- 採血のセンス(時間をかければ練習や経験でも上手くなるが、センスも必要)
- 厳密さと正確さ(採血は、検査の採血も原料となる血液の採血も細かく厳しい手順が定められている)
例えば、消毒方法や順番、ラベル張りの順番、コールバック用紙にシールを貼る順番も細かく決まっている。
検査検体の量や血液を入れるスピッツの順番も厳密で、採血量が不足すると検査ができないばかりか原料の血液が使用できない事態につながりかねないので、検査の採血段階から非常に厳密さを求められる。
他のルームの自己点検委員が規定を守れているか検査するので、日ごろから間違えた手順が癖ついている場合すぐに点検で見つかるようになっており、日々の業務の正確さは非常に重要。
献血ルームのリアルな一日
献血者が献血ルームに来られる前に、搬出作業とルームの準備をします。
搬出作業の例
- 資材(採血キットや検査用試験管など)の準備
- ロット番号(遡及するときのための番号)のチェック
- 採血後の血液(原料血液)の搬出
- 検査検体の量が足りているかの確認と搬出
ルームの準備
- 採血準備
- 機械の立ち上げ
- 掃除
- 今日の予約数、目標採血人数(日赤しか献血業務をしていないため年間目標が決まっている)の確認
- 確保数が足りない時は献血推進事業課が登録者にメールしたり街で呼びかけたり広報活動する
受付:事前問診(渡米歴など)
問診:ドクターによる問診
検査:看護師による検査用の採血(Hb、PLT、RBCなど)
採血:輸血用の血液を採血(太い17~18Gで穿刺) 前後で血圧測定し看護師が休憩時間や水分補給を適宜進める
休憩:ロビーで体調不良者がでたら対応
時折ある事例
- 献血後にトイレで迷走血管反射で転倒する人もいる
- 転倒で頭部打撲のあるときなどは近隣病院に搬送し、外傷でCT撮影することもある
- 成分献血後に返血するとき皮下出血するときがある
- 献血場外(ルームの外)でVVR起きた人を迎えに行くこともある(電話してくれるよう言ってあるから)
- 混雑しているときは用事で急いでいるなど個人的な事情がクレームになることもある(献血ルームは病院ではなく善意による献血であるため、医療機関でしか働いたことのない看護師はこの違いを十分理解しておく必要がある)
- HLAまで一致する血小板を必要とする患者さんなどは特別に登録されている特定の献血者がおり、稀少例のときは看護師も必然的に緊張する
- 日本在住の外国人の方が献血してくださる時もあり、通訳がいてもコミュニケーションや説明の理解度には十分な配慮が必要となる
お待たせすることのないように予約制にしてあるので、混むこともあるが、病院のように予測不能な事態が起きる頻度は少ない。そのため休憩休息も計画的にとることができる。
献血ルームが18:00までオープンしている場合、終了まで18:30くらいまではかかる。
配属される献血ルームにもよるが、早出出勤する日は交代で決まっていて、その日は早く来ても定時まで勤務し、残務があれば残業するので拘束時間は長くなる。もちろんサービス早出やサービス残業ではなく手当がつく。
全員で片づけして勤務終了
転職する人へのアドバイス
- 覚えることが多く、正確さが求められるので、順応性は高いほうがいいです
- 常に献血者が目の前にいて、ルーチン業務が積み重なっており、さらに個別対応を考えながら仕事するので、想像しているより体力も精神力も使います
- 病院とは違い献血者は常に目の前にいて自分一人になる時間はないので、緊張時間が長いです
- 善意で献血に来られるという特徴もあり、心優しい方との出会いや定期的に献血してくださり顔見知りになる場合もあるのでアットホームな雰囲気もあります。
- 対象者が病気で来訪される方ではないため、看護師自身が病気や事故で親しい人を失ったり辛い経験をして医療機関勤務に気が向かない場合などは、看護師免許を使って社会に貢献できる貴重な職場かもしれません。(筆者の私見です)
献血ルームの看護師が担う使命は非常に特殊かつ重要です。輸血の需要が予測できず原料の血液は100%善意に頼るしかない中で、血液を一定量確保する役割を担うからです。私たち看護師の多くは輸血が手に入る環境で働いていますが、日本の僻地では輸血が手に入りにくいため生血輸血で救命しているところもありますので、どこの職場でも輸血の大切さに感謝して働きたいですね。
輸血の詳細情報は日本赤十字のホームページで確認できます
献血について https://www.jrc.or.jp/donation/
医薬品情報 https://www.jrc.or.jp/mr/