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研究費の使い道、お勧め紹介

看護師から初めて大学教員になった方向けに、職場で支給される研究費の使い道についてお勧めをご紹介します。

目次

研究費とは

 研究費とは、研究のために必要な経費に充てるための資金です。研究費は国や民間からの助成金などいろいろな種類がありますが、だいたい大学に就職すると、全員の教員が1年分の研究費を支給されて個人の研究に使うことができます。この研究費はたいてい職位が高い人ほど高額になりますが、金額は大学によって違います。

 これとは別に、自分で研究費を獲得することも求められています。有名なのは文部科学省の所管である日本学術振興会が行っている科学研究費助成事業の「科研費」です。研究計画を立てて提出(応募)し、審査に通れば100万円単位でも研究費がもらえます。研究にIphoneが何十台も必要とか、特別な分析機械が必要とか、その研究に合わせて何にいくらかかるのか予算立てもして提出します。

科研費をもらっている先生たちは、大学からもらえる研究費が余るときがあるので、分野で急に必要になった機材とかを「私の研究費でそれ買おうか」と言って購入してくれる時もあったな。なんでそんなお金もっているのか不思議だったけど、こういうことだったんだね。

研究費の使い方/教育編

 私は助手のとき1年間10万円くらいの研究費があったと思う。でも臨床看護師が急に助手になって研究とか意味不明だし、もちろん研究もしてなかったから10万円も使うことない。だから教授に聞いたら「先生の読みたい本買ってもいいのよ」と言われて、看護管理と看護研究の雑誌を年間購読にしたことを覚えている。もったいないことをした。だって全然読まなかったし図書館にもあったから(笑)

みなさんは私みたいに無駄使いしないようにしてほしいから、まだ自分主導の研究がない方や、お金のかからない研究をしているかたは「教育」に使えるような使い方を紹介します。

購入不可のものを確認する

 まず大学の規定をみて、買っていいものと駄目なものを確認しましょう。初めて教員になったらまだ研究を始めていない方もいるかもしれませんが、研究・教育(授業・演習・実習など)に使用する物品はほとんど購入可能であることが多いです。自分のデスクを見てください。仕事するために足りないものは研究費で購入できるかも。

パソコンとプリンター

 高額なものは研究費で購入できないときがあるので、いくらまでなら研究費で購入できるか確認して買いましょう。高額なものは退職するときに大学に置いて去らないといけないときもあります。そうなるとパソコンとか不便なので、自分で購入するときもあります。

パソコン購入のコツ

  • デジタル教科書で講義室に自分のPCを持ち出す頻度が多いならスペック重視のノートPC
  • 学会・出張が多いなら軽さ重視のノートPC
  • 特に海外に持ち出す頻度が高い人は軽さ重視のノートPC(海外はスーツケースの取り扱いが荒いので精密機器は手荷物が無難)
  • 講演会など他の施設で自分のPCを使う人は接続の選択肢が多いPCを選ぶ(レッツノート最強説)
  • 持ち運びが多い人はモバイルバッテリーとの相性も検討しないと、荷物が増えて重たいです
  • 動画編集が多い人はデスクトップPCがパフォーマンス◎

 

レッツノートはデザインの人気はないけど耐久性・軽さ・スペックの高さなどで圧倒的にビジネスマンに人気。他のPCに比べて周辺機器との接続方法が多いからどの施設に行ってもプロジェクターにつなげて便利だよ。難点は高額なこと。研究費で変えるなら最高~。

私はMicrosoft surface pro8を買ったけど、起動は早いし、バグらないし、スペック最高です。でも出先で座って膝の上でPCを使うことが意外に多いからデザイン的に使いにくいのと、持ち歩くので結構重いな…って購入後に気付きました。

私はカッコいいからMacのPCを買ったけどIphoneでもPCでも同じことが簡単にできるから写真や文書の管理がしやすいわ。でもWordやPowerPointファイルを周りの人とやり取りすると文字化けして仕事をやり直すことが多いから次は違うものにしようかな…。

値段やスペックだけではなく、どんな場面でどのくらい使うかも想定して購入しましょう。

Copilot PCについて

 2024年6月にWindowsからAIのCopilot搭載PCが発売されました。教員が知っておくべき情報として、このPCはオフラインでAIを使うことができます。今までは動画編集AI、文章生成AI、スライド生成AIなど仕事の目的によって無料AIをネット上で使い分けていた人も、このパソコン一つあればオフラインでほぼすべての仕事を完結できる強者です。オフライン作業のためAIに与える情報はPCにとどまるためWeb上への情報漏洩も防げます。今後の仕事効率化と革新的な教育には必須となります。一方、使い方によっては情報漏洩ハイリスクとなりかねませんので、慎重な購入・使用をお勧めします。ビジネス界でも顧客情報をどのように管理するか議論されるでしょうから学生情報の取り扱いについても大学方針が示される可能性はあります。

データ記録メディア

 研究データや大学資料など外部に漏れると困るものは暗号化できるデータ記録メディアを使用すると安心です。学生の学籍番号や名前、成績などが入った資料は大学外に持ち出せません。大学で許可されている範囲のデータを個人情報がない状態にして持ち出したときにも、大学の会議資料や授業資料などを保護したい時にお勧めです。もし紛失しても、USBを開くにはPWが必要で誤入力が一定回数繰り返されるとロックされてログインできなくなるものや、内容が暗号化されるものを使用していると安心ですよね。このようなメディアは高額なので、自分の必要に合わせて研究費で購入すると便利です。

秘密にしたいデータではないけれど、携帯電話で撮影した写真・動画、作成資料をPC用に取り込みたい時もあります。クラウド経由が一番良いですが今は携帯とPC両方に対応できるSSDも出ているので、データはSSD保存して携帯でもPCでも編集できるようにすると便利です。

実習用具

 白衣・靴・鞄など実習に必要なものはそろっていますか?4月からすぐに実習だと早急にそろえる必要があるので、ここは優先順位が高いかなと思います。学校で教員の指定カバンがない場合、自分で買うのを忘れないように要注意です。

私のお勧め実習用かばんはコレです。荷物が多い人や忘れ物が多い人は、これに全部つめこんで、本棚に立てて収納できます。ポケットや仕切りが多いので実習専用のペンやマスクなど小物も整理整頓しやすかったです。

文房具

 ペンから始まりホッチキス、穴あけパンチ、ハサミ、付箋など。他の先生をみて、お道具箱持っている人いるかもしれません。私も授業にいくとき、A4のお道具箱に教科書や印刷物など準備一式入れていく派でした。私は部屋が狭かったとき学生への配布物を置ける専用キャビネットがなかったから、お道具箱を3色用意して、授業ごとに印刷物を入れて準備し、授業後は学生の提出物を入れて帰って分類保管していました。

 試験のときは解答用紙を大きな茶封筒に回収する学校もあって、茶封筒は少し大きいので普通のお道具箱に入らないのです。だからお道具箱ワイドも1つだけもってます。お道具箱ワイドってなぜ茶色しかないのかしら…もうちょっと可愛い色欲しいわ。(ワイは昭和女性なのでお道具箱と言っていますが最近はデスクトレーって言うらしいで)

インクとコピー用紙

 プリンターインクやコピー用紙はどこの大学でも使えるから購入しておくと便利です。消耗品なので返しなさいと言われることもありません。ただ、プリンターって消耗品で壊れるものなのでインクの大量買い置きは不要と思います。

アプリ

自分の専門領域によって必要なアプリを購入するのも賢い選択です。

  • 動画・写真編集アプリ
  • 解剖生理学アプリ(ヒューマンアナトミー:解剖を3D回転で見れるなど)
  • 英語翻訳アプリ(DeepLなど)
  • 会議用アプリ(領域で1つしか大学公式のZoomアカウントがない場合不便なので個人契約する人もいます。)
  • AI(ChatGPT4をはじめとするAIも今後必須になると思うので、今から検討しておくとGood)

書籍

 病気が見えるシリーズとか全部の診療科のものをそろえたい人は研究費が便利かもしれません。でも教員は特に最新情報が求められるので、手に入らない良書でない限り古い本をずっと持っていることはお勧めできません。図書館やe-bookで見れるものは購入しなくていいと思います。

研究費の使い方/研究編

 研究にどのくらい資金が必要かは研究によって違います。きっと初めて教員になる人はその意味が想像できないと思うので、研究の内容によってみんながどんなものを購入しているのか、すごく簡単に例を出してみます。

今は自分の研究がなくても、大学教員は絶対いつか研究しないといけないわけよ。そしたら研究にお金がかかるとわかったときに、残金ゼロ円だと後の祭り。研究費もご利用は計画的に。

アンケート調査の研究

患者さんや看護師、市民などにアンケート調査をする研究があります。

500人に紙面でアンケートするなら…

  • アンケート冊子の製本(印刷)料金
  • アンケートのお願い用紙の印刷
  • 封筒、切手リスト

このアンケート作業を、研究費がない人は自分の手作業でコツコツやりますし、研究費がたくさんあればアルバイトを雇ったり業者にお願いできるというわけです。

500人にアプリでアンケートするなら…

  • アンケートアプリ料金
  • 個人情報がもれないセキュリティ対策料金
  • 場合によっては研究用iphoneなどデバイスを全員に配る

一番安いiphoneでも7万として500人に配るとかありえないですが…、研究の内容によっては看護分野でも数十台配るケースをみたことあります。

分析ソフトウェア

 数値を分析する研究には統計ソフトウェアが必要です。学生全員に軽い運動をしてもらい心拍数の前後の変化をみたりする研究は想像しやすいですね。もしくは国勢調査のように各世帯の人数や属性、資産額、価値観などを前年度と比較したり推移や傾向を分析する研究もあります。このように数値を扱う場合、統計ソフトウェアが必要になります。

ソフトウェアの例

  • SPSS:30万円以上
  • JMP:13万円以上
  • R:無料(高機能で使用者を選びます)など

 言葉を分析する研究にも分析ソフトウェアが必要です。インタビューをすると話してもらった内容が文章で残り、文章がデータになります。分析ソフトウェアはその文章を切り分けたりまとめたりして分析することになります。

ソフトウェアの例

  • Nvivo:17万以上
  • MAXQDA:4万円以上
  • QualCoder:無料

 各ソフトの値段は学生や教育機関用の割引が使えたり、バージョンによっても違います。自分の研究に合わせたソフトが必要になりますので、必ず指導してくれる人に相談して購入してください。

文字起こし

 インタビューデータは録音した「音」なのでそれを文字に起こす「文字起こし」作業が必要になります。それをアプリやAIでできる時代になりました。AIは「議事録作成」のkeywordで探すと録音&文字起こしの情報が出てくるので探してみましょう。今開発されたばかりで高額ですがコスパは未知なのでレビューをよく読んで購入しましょう。また業者に依頼することも可能です。どちらにしても数万円単位で資金が必要です。

翻訳

 英語論文や書籍を読まないといけない場合、翻訳が一番時短です。もともと英語が得意であれば無料アプリの翻訳と原文を見比べるだけで十分内容を理解できると思いますが、英語が苦手な人にとってはDeepLなどの翻訳アプリを購入するほうが有料版にするとWebページごと・文書ごと翻訳してくれるので時短です。

 自分で英語論文を書くときは日本語で書いて全部英語翻訳に出す人もいます。自分である程度英語で書いて校正に出す人もいます。英論文はネイティブチェックが必要なので必ず業者に出すことになりますから、これに研究費を使う人もいます。

翻訳業者の例

  • エディテージ
  • エナゴ
  • JMC

大学によっては業者により割引制度を用意していることもあるので調べてみましょう

 他にも研究によってかかる経費は様々です。ですから新任教員は、初年度の研究費を次年度に持ち越すことができるなら、研究開始と共に研究費を投入できるように貯金するのも賢い選択です。

看護師のときは、病棟には仕事用のPCとプリンターがあって、シュレッダーもあるし、文房具もそろっているし、自分のお気に入りで使いたいものだけは自費だけど、白衣も靴も職場が用意してくれるところが多いと思います。これら仕事に必要な経費の部分が、大学では研究費として計上されるということです。私は初めて就職したとき、文房具もそろってなくてすごいびっくりしました。今まで自分の仕事に必要なものを自分でそろえることがなかったからです。ところ変われば、経費の扱い方も変わるという、面白現象でした。

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