実習指導者が行う実習初日の病棟オリエンテーションの留意点について紹介します。
病棟オリエンテーションの目的
学生の学年や学校によって初日の病棟オリエンテーションの目的が多少違うと思います。
よくある病棟オリエンテーションの目的
- 学生が病棟の特徴を知るために行う
- 学生が実習環境を知るために行う
でも、よ~く考えると「知ってどうすんの?なんでそんなに知りたいん?」と思いますよね。私は学生が病棟オリエンテーションを聞くことで次のようになれれば最高だなと思っています。
学生が病棟オリエンテーションを聞くことで
- 病棟の特徴をふまえて患者の看護計画を立案できる
- 実習環境を知り自分の実習を円滑に進めることができる
病棟オリの目的や内容が謎だな~と思ったら、事前打ち合わせの時に教員に聞いてみてください。みんな意見が違うかもしれない。それはそれで面白いけど、この目的の合意形成がされていないと、初日のオリエンテーションはただの説明で終わってしまいます。
病棟オリエンテーションの留意点
一例を紹介します。
看護目線でオリエンテーションする
よくあるのが、「うちの病棟は7:1看護で、チームナーシングをしています」。学生はメモをとるけど、そのメモは実習期間中に見直されることはもうない。なぜならこの情報が直接看護計画立案に必要になることはないからです。これの説明は学生の学年によっても変わりますが、私は指導者がこの説明をしたときに学生に「この意味わかる?」と聞いてちょっと説明します。
1年生の場合
1年生は最初、病院という環境がどのようなところか理解するために実習に来ます。その時は病院の看護体制が患者の生活にどのように影響を与えているのかを話すようにしています。
詳しくは看護管理の授業で習うけど、7:1看護は患者さん7名につき看護師1名を配置していますよってことやねん。指導者さん、7:1看護の場合、日勤と夜勤ではだいたい何人の看護師が働いているんですか?
うちの病棟は36人まで入院できるんだけど、だいたい師長さんも含めて日勤で8人、10人いるとすごく嬉しい。夜勤は3人でしてます。
1年生はこれだけじゃわからないから、もう少し補足します。
夜は36人を3人で看てるんだよ?すごいよね。だから夜に患者さん全員がお風呂に入りたくても、介助する人がいないから無理だよね。3人で患者さんの安全を守ってるから、急変しそうなことや難しい看護ケアは人が多い日勤中にしといたほうが患者さんにとってもいいよね。
1年生だけど普通に理解して意見をくれるときもあります。
へ~!じゃあ夜は看護助手のバイト雇ったらだめなんですか?
面白いですね!
3年生の場合
3年生は自分の受け持ち患者の看護展開の実習が多いと思います。これは分野によりますが、慢性期看護の実習であれば継続看護を理解する実習目標がありますので、日勤から夜勤への継続性に加えて、今入院している病院から転院先への継続性も視野に入れたシームレスな看護に着目します。ですから看護体制を切り口に慢性疾患患者の継続看護について補足するときがあります。
みんなの受け持ち患者さんは、リハビリ病院に転院する人もいます。リハビリ病院だと看護体制は10:1とか13:1になるときもある。今7名の患者さんに1名の看護師がついてるところから、ほぼ倍の患者さんに看護師1名がつくところに転院するわけ。
病状が落ち着いてから転院するんだけど、だんだんと看護師の援助がなくても自立した生活ができるように、今から患者さんの自己管理能力をのばしていけるように関わっていこうね。
やばーい(と、よく小声で言っている 笑)
お手本指導者の説明
例えば経験の長い実習指導者は、環境を説明するときも自分の病棟患者の特徴を踏まえて看護目線で+αの補足があります。「ここにナースコールがあるので、自立している人はみんなベッド柵にかけています。でもうちは難病の患者さんが多くて自分でナースコールを取るのが大変な人も多いので、必ず退室するときはナースコールが手元にあるかとか、握っているかとか、その人の障害に合わせてSOSを出せるか確認してます。ナースコールがあればいいってもんじゃない。」
大昔ですが泌尿器科の指導者の説明も印象的でした。「うちは腎泌尿器科で他の病棟よりも患者さんが尿量測定することが多いと思う。だから普通患者さんが出入りしない汚物室も患者さんが毎日何回も尿量測定して尿器を置いていくでしょ?患者さんにとっても日常生活の場の一部なの。だからここは汚染している場所だけど、綺麗にしておけるように気を使っている。」これらのオリエンテーションはただの説明ではなく看護目線での説明ですね。
学生目線でオリエンテーションする
病棟オリエンテーションはつい看護師目線で行われがちです。実際私は実習指導者側であったとき、学生にあまり必要のないことを説明していたな~と思います。オリエンテーションでは病棟の看護物品の位置や患者さんの入院生活に必要な設備についての説明がありますが、これが意外に学生目線でないことが多々あります。私は指導者に、学生が実習を自分で進めていけるように説明してほしいとお願いしています。
例えば、「清拭タオルはここで温めてある」だけでなく、取り出したら何に入れて病室にもっていくのか、その時ワゴンはどこからとったらいいのかなど、学生が自分で準備していいことは教えてもらうようにしています。そしてケアに行く前に最終チェックです。それは片付けも同じで、「陰洗ボトルはここからとって」だけでなく、どうやって洗浄するのか、血液や汚物が付いたときは洗浄方法は違うのかなども説明が必要です。汚染リネンの片付けも説明されていたら学生は自分でできますし報告します。よく「またケアするときに教えるね」と言われますが、せっかく一度にオリエンテーションできる機会を使わない手はありません。ケアの時教えるねと言われると、学生は物品の位置がわかっていても本番では準備・片付けが指示待ちになって時間をロスすることがよくあります。患者さんを待たせることになるので、「よくあるケアの準備片づけはオリエンテーションで自分たちも質問する。動きをイメージするためのオリエンテーションですえ。」と伝えています。
そして、学生目線の最たるものですが、災害時の初動についてオリエンテーションされないことがあります。必ず災害時の学生の動きについて、指導者と教員が事前打ち合わせし、師長の了解を得て学生と共有しておくことが必要です。地震・火災になったとき必ずしも現場に教員がいるとは限らず、指導者も独りで学生の安全確保はできません。患者ファーストですから、これは大人の学生も初動を心得ておくべきですね。
オリエンテーションは毎年毎回ほとんど同じです。読んでわかるものであれば事前に学生に配布する指導者さんもいました。その時にスライド作成が必要であれば、それで徹夜することのないように時短術を使ってください。
実習目標に合わせて、他にもやり方はたくさんあります。みなさんの工夫の一助になれば嬉しいです。