看護師になって20年、何度も退職・転職した経験からいいますと「退職は計画的に」が一番です。心身の不調がピークのときはすぐにでも休職か退職をお勧めしますが、そうでないなら計画的な退職はお互いにとって良いですし、自分にとってのメリットが大きいです。
生活防衛資金の確保
生活防衛資金とは急なときに備えた生活費のことです。今ひと月の基本的な生活費が30万円なら、最低3か月は必要なので90万円の資金をためておく必要があります。これは子どもの大学費用や老後資金などの貯金とは違ってハプニング用の資金なので別に貯金が必要になります。
生活防衛資金が最低3か月分必要といわれる主な理由は、一身上の理由で退職した場合、失業保険給付金が出るまで2~3か月待つからです。すでに次の就職先が決まって退職するならこのお金は必要ないですが、就職先が未定のまま退職するとだいたい就職活動に1~3か月間くらいかかり、その間の生活費や就職活動のための交通費などが発生します。もし就職先がみつからなくて失業保険給付金をもらうとしても、退職後から給付金支給開始まではアルバイトなど仕事をしていないことが失業保険給付金を受け取れる条件なので、結局2~3か月間は完全に貯金持ち出しになります。そのときの生活費として3か月分必要と言われています。とはいえ悲しいかな、貯金を使うことも実際あります。個人的には生活防衛資金は6か月分がお勧めで、それだけあると就活期間も余裕をもって「ああ~、今までよく頑張ったぜぇ~」と満喫しながら過ごせるからです。時間はあるのに同僚と飲みに行くお金がないとか、映画や旅行を我慢するのって辛いですよ。詳細は別記事で!
退職理由を明確にする
退職は直属の上司に申し出るのが原則です。その場合、退職理由がぼんやりしていると、「もう一度考えなおしてみない?」とか言って引き留めに合います。雇用者は労働者の退職を引き留める権限はないので、「辞めます」と言って辞めたらいいのですが、退職理由がぼんやりしていると引き留められたときに、自ら留まってしまいます(笑)。留まってもいいのですが、辞めたい気持ちがあるということは何か理由があるはずです。人間関係や、自分のしたい看護ができないこと、違う職業に興味がわいたなど退職したいと思った理由を明確にして、退職しなくても解決できるなら儲けもんですし、退職しないと解決しないなら意味なく留まっても苦痛が長引くだけです。ですからちゃんと自己分析して、退職理由を明確にしましょう。
退職日を決めて早めに上司に伝える
退職日を決めてから、上司に退職の意向を伝えることをお勧めします。退職日が決まっていないと引き留められて長々と苦痛を味わうことがあります。私は退職したいから面談してほしいと言ったら何週間も上司が面接をしてくれなくて困ったことがありまして、今思えば「*月に退職したいので面談してください」と言ったら違ってたのかなと思う時もあります。(もちろん面談をしないほうがだめですよ。)また、退職日を相談できるとなればもちろん上司は「(新年度に新しい人材の募集をするから)今年度いっぱい働いてほしい」と思うのが普通です。私が上司ならそう思います。でも退職日を明確に打ち出されたら固い決意を感じて、退職手続きに進んでいくのが人間の気持ちです。
退職日を決めたら早めに上司に伝えましょう。法律では退職の2週間前までに申し出ることとなっていますが、私たちの職場はご存じのように、あなたがいないと患者さんの命や生活の質に直接影響が及ぶ仕事です。だから、できるだけスタッフと患者さんに迷惑がかからないように計画的に早めに申し出ることが皆にとって幸せです。シフトを作ってしまってからだと全ての人のシフト変更が必要になりますので、できれば退職月の勤務シフトが完成する前に伝えてもらえると助かるのが上司の本音です。もっと言うなら、3か月くらいの猶予があると、代わりの人を雇用するために募集をかけて面接もできるので助かります。ただ、退職したいときはいろいろと事情がありますよね。私は給料未払いなど円満に退職する必要を感じないときは、円満退職の慣習よりも法律を優先してきました。もちろん法律ですから何の問題もありません。
書類はすべて自分用に控えを取る
時々ありますが、組織と反りが合わなくて退職したい人がいます。例えば勤務時間の管理が曖昧、残業がついていない、シフトがころころ変更になり休日日数が少なくて法律違反ではないかと思うなどです。そういう場合は特に、退職に関連する書類をすべてコピーして自分用の控えを取ることをお勧めします。なぜなら、日々の人事管理がいい加減な組織はたいてい退職の煩雑な手続きも苦手だからです。提出した書類をもらっていないと言ってきたり、お願いしていた書類を送付してこなかったり、早く辞めたいのに何度も職場とやりとりすることになります。ですから、退職に必要な書類と、提出日、受取日などを表にして、自分の提出した書類はコピーして、自分でしっかり手続きを進めるようにしてください。普通の組織でも、退職証明の発行を依頼していたのに、健康保険の離脱証明を発行してくれた職場があって、磁場が狂ってるのかと思ったわよ。それぐらい退職手続きって先方も大変なのでしょうね。
退職理由によってはすぐに失業保険給付金が出る場合がありますので、その件については別記事にしますが、政府が準備している制度をフル活用できるように自分でも調べて計画的に退職手続きを進めていきましょう。労働者は手厚い保護を受けていますので、実は活用できる制度や給付金がけっこうありますよ~。
転職するなら、今後の看護師の職場傾向も知って計画的に活動してくださいね。