看護師免許取って20年間みてきました。看護師の退職理由のTOP3はいつだって、結婚・出産・育児、病気、人間関係がランクインです。今回は特に人間関係に焦点をあてて退職理由の本音と建前について考えてみます。
看護師の退職理由の本音
退職理由の集計方法
公式に発表される看護師の退職理由は様々な方法で集計されていますので、「みんながこう言って辞めている」と一概にうのみにして苦しいのに退職を我慢したり、逆に退職に踏み切るのは危険です。例を示しますね。
本人の申し出を集計した場合
- 看護師の退職届に書いてある理由を各施設が集計したデータの報告
- 本当の理由ではなく建前の理由が多いかもしれない
きっと人間関係が悪かったり、それが原因で精神疾患になったり、体調不良がおきたりして退職している場合もあるでしょう。でもそういう理由はすべて「一身上の都合:体調不良」としてまとめられて、「一身上の都合:人間関係の悪化」とは書かれていないはずです。「結婚:人間関係が悪化したときタイミングよく婚約したから」とは書かれていないはずです。このように真実の姿がみえにくいデータもあることを知っておきましょう。
管理職にアンケートして集計した場合
- アンケートで「部下が辞めたと思う理由」を師長が回答したデータの集計
- 部下との面談を経ているので現状が浮き彫りになることもある
調査の方法によってはリアルな声が報告されることもあり、そこにはいつも人間関係があがってきます。また、精神疾患、身体の疾患、看護の仕事に合わないと感じる、患者との関係に不安、事故を起こさないか不安、なども上がってきます。でもこれらの調査をした病院の規模や教育体制に偏りがあったり、回答者数が少ない場合もあるので、あくまでも氷山の一角としてとらえることは大切です。
原因は人間関係、退職理由は体調不良
実感として、人間関係が原因で辞めるというよりは、「人間関係が悪くて心身不調となり働けなくなる状態」になって辞めるほうが多い印象です。その一歩手前で、どうにかできないものだろうか、働けなくなる前に手を打ちたいです。働けなくなると転職するエネルギーもないですし、経済的な不安が続くと病気はさらに悪化するリスクがあります。ですから、自分の我慢の限界を超えたときは、病気になる前に、働ける状態で手を打ちましょう。
退職しなくても、異動したり、一時的に休職したりもできます。信じられないかもしれませんが、上司は「もっと早く相談してくれたら、もっといい方法があったのに」と思うことしばしばです。でも働けない状態になってしまったら、上司が手を差し伸べられる選択肢が狭まってしまうのです。(上司が原因の場合は、この文章を無視しよう)。急激にイベントが起きて、心身の不調が進むこともあるでしょう。そんな時は、一旦休憩です。ちょっと休む、それは悪いことではありません。私たちが患者さんにいつも勧めている方法ではありませんか?
看護師の退職理由の建前
再就職のときこそ建前を使おう
もし退職するのであれば、「本音」を書いて退職するもよし、「建前」を書いて退職するもよしです。自分の納得のいく方法でいいと思います。「建前」を上手に使うのは、むしろ再就職するときです。
私は今まで何度も転職し、そのたびに年収を上げてきましたが、面接で退職理由について突っ込まれたことはないよ。
何十年も生きておれば、持病・手術・介護もありますし、雇用側の契約違反も経験しました。年度途中での退職も何度もありますが、退職理由の詳細を聞かれたことはなく面接を落とされたこともありません。それだけ看護師が欲しいということなのでしょう。
面接では嘘をつかず真実をいいますが、原則は、「面接官が聞いて不愉快な思いをしない表現で伝える」、これが私なりの「建前」です。
昨今、再就職時の面接で退職理由を上手に伝えるためのテンプレートが大流行しております。でもそれは人事関係者もみており、次々とくる応募者が同じような表現で退職理由を述べたらどう思うでしょうか。「ああ、どこかの例文どおりだな」と感じ、嘘をついていないのに信用ならん人に映ります。ですから、テンプレートは参考にしつつも、本当の退職理由をどのように伝えるのか自分なりに工夫してみるのはいかがでしょうか。
自分の本当の退職理由を分析しよう
退職した本当の理由は何ですか? 体調不良で働けない状態になった場合、きっと退職理由は「人間関係が悪くてしんどすぎたこと」ではありません。退職理由は「心身の不調で働き続けるのが難しくなったこと」です。体調不良になった原因と退職理由は関連があっても同じではないことがありますので、落ち着いたら少し遠くから自分を眺めてみましょう。そしてその後、社会復帰にむけて一生懸命努力なさったことがあるはずですので、それを冷静に整理してみましょう。
整理すること
- 自分は何が原因で、どうなって、なんで退職することにしたのか
- 退職後、社会復帰のためにどのような対策を講じてきたのか
面接での退職理由の伝え方
面接官は体調不良になった理由を聞くかもしれませんが、もっと興味があるのは「これから一緒に働ける状態か」です。ですから体調不良になって退職したあと、どのように自己分析し対処したかは大切です。
*月ころから体調不良となり、長引きそうだったので一旦退職して治療に専念しました。*月に投薬もなくなり全治しましたが、体力を戻すために半年間アルバイトをして職場復帰の練習期間をとりましたので、今回正職員として応募しました。
病気のことが言いたくなければ他の表現でもいいのです
**についてずっと考えておりまして、やはり**看護ができる環境に移りたいと思い転職することにいたしました
どのような表現を使っても構いませんが、本音と建前をうまく使いましょう。
大切なこと
- 嘘はつかない、真実を述べる
- 先方が聞いてきたことだけお答えすればよい
- 自分の辛かった体験や腹立たしい気持ちをすべて話す必要はない(おそらく面接官もそれは聞きたくない)
ピンチをチャンスに変えてきた経過を添えられると、もっといいかもしれません。(実際、そんなポジティブに思えるまでかなり時間かかりますけど「建前」ね)。自己分析をして、真実を伝える練習をしてみるのも一案です。
真実を述べるけど、全部話す必要もないわけです。先方が聞きたいことにお答えすれば十分です。なんだか女性のメイクのようですね。素顔は変わらないけど、メイクの仕方で柔らかい女性にも、仕事できる女性にも、いかようにも見せられる。事実は変わりませんし履歴書に書いてありますが、あなたの印象は伝え方や表情などの技術で変わります。今の自分の魅力を最大限PRしてくださいませ。(ちなみに私、化粧は下手)
人間関係は複雑な問題なので、それに関連する退職・復職に王道の方法はありません。でも私はつらい思いをなさったにもかかわらず、今でも「ずっと看護師でいたい」と思っておられる看護師のキャリアを心から応援しています。あなたには日本最多の医療職免許、「看護師免許」があるのです!