看護師に疲れた時に読むと、原点に戻れるちょっといい話をします。
COVID-19が看護師の家族に及ぼした影響
2020年にダイヤモンドプリンセス号が入港できずに横浜港沖でとどまったとき、私たちは新興感染症の始まりだろうとは思いましたが、これほどまでに看護師の家族を脅かす事態になるとは想像しませんでした。第1波のときは、感染症の種類も治療方法も治療薬も未知でしたので、エボラ出血熱クラスですか?と言わんばかりの警戒ぶりでしたが、第2波くらいからは全容が見え始め効果のある対症療法が出てきたため、日本全国で感染者をどのようにトリアージすべきかが問題となりました。日本は諸外国と比べるとベッド数が少なく医療者も少ない国ですので、入院患者の急激な増加に医療体制が対応できない弱みをもっています。そのため臨床看護師たちの仕事は非常に過酷なものとなりました。
2021年、あまりの激務に耐えきれず看護師の離職率が激増するのではないかと思いましたが、なんと失礼な予測をしたものかと自分を恥じました。離職率は過去10年で最高の11.6%と言われつつも昨年10.6%からの1ポイント上昇にとどまり、いつも約10~11%で推移しているのですから激増とまではいかなったのです。日本中の看護師たちが、今自分が辞めたら医療が立ち行かないということを自覚していたのかもしれません。妊婦や病気・障害をもつ看護師たちも、長年現場を離れていた看護師たちも、理由あって臨床を離れた看護師たちも、自分たちにできる形でコロナ渦の医療を支えたことは言うに及びません。そのため、子育て中の看護師が保育園を断られたり、看護師の家族が地域でよそよそしくされたり、家族を感染から守るため病院やホテルや車に泊まって生活した人もたくさんいました。看護師に限らず、全ての人がパンデミックによって何らかの大きなストレスを抱えたことは明白ですが、半世紀生きてきて看護師の家族が差別や危険にさらされるなど想像もしませんでしたので、報告されはじめた研究結果や周囲の看護師たちが語ってくれた経験を聞くと、本当によく耐え抜いていただいたと感謝に堪えません。
家族は一番の理解者だった
コロナ真っただ中で、私の友人は看護教員をしていました。新人看護師のころから苦楽を共にした頼りになる友人で、学生時代から長く付き合った彼と結婚し、乳児と2歳くらいの子どもがいたように記憶しています。結婚前から知っていましたが、旦那はいつも的を得たニヒルなコメントをする人で、看護教員の仕事は「言葉遊び」と絶妙表現をしたり、世の中に合わせる様子をこれっぽっちも見せない人でして、詳しく書いたら彼のことがすぐ特定されるのではなかろうかと思うほど個性のある、愛すべき世捨て人的な感覚の持ち主です(読まないだろうけど、読まないでくれと願う)。
そんな彼と子育て中のコロナ渦、看護教員にヘルプの要請がかかりました。感染者を待機させるビジネスホテルで看護師が不足していたため夜勤要員が必要になったのです。そのころはまだ、看護教員がワクチン接種や臨床の外来ヘルプをすることは稀だったのですが、臨床看護が得意な友人は要請に応じたいと思いました。でも乳幼児が2人もいて家族の世話もあるし、自分が感染したら家族と隔離になってしまうし、家族が差別されたり職場で辛い目に合うかもしれません。ですから意を決して同居している世捨て人に相談しました。そしたら彼は、ビックリするほど素直でまともな発言をしました。
「あんたは、こういう時のために看護師になったんと違うんか」
そうですね、はい、行ってきます。それ以上でも以下でもない、その通り。
家族は一番の理解者だった。
家族に支えられて、今も看護師を続けている方はきっとたくさんおられることでしょう。一人では生きていけないことを日々患者さんから教えられるけど、それを教えてくれる人はいつも一番近くにいますね。ありがとう。